繙蟠録 I & II
 

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繙 蟠 録 II 2024年7-12月

2024/12/25 全琫準(チョン・ボンジュン)闘争団に生きる革命伝統

韓国の大統領尹錫悦の逮捕・拘束を求める闘いで,12月21日,全国農民会総連盟「全琫準(チョン・ボンジュン)闘争団」のトラクター上京デモは,警察の阻止線を突破して大統領官邸に向かった。

◯12.2328時間かけて市民が突破した警察の車壁…トラクターデモ隊,大統領官邸へ=韓国ハンギョレ新聞(写真あり)
◯12.23「トラクターデモの女たち,欧州なら頭に銃弾の穴が開いた」韓国警察が書き込んで俎上に中央日報

併せて,8年前の全琫準闘争団のトラクターデモの記録をあげておく。
◯2016.11.25進撃のトラクター「これから朴槿恵掘り返しに行く」ハンギョレ
◯2016.11.26耳を塞いだ大統領府目がけて人間の鎖が行進,また行進ハンギョレ

 「全琫準闘争団」は,日本でいえば「井上伝蔵闘争団」となろうか。日本の労働運動と左翼運動に欠けているものは,闘いの伝統への誇りと歴史意識ではないだろうか。社会がブルジョアジーとプロレタリアートとの二つに分裂・対立してから,いつでもどこででも,独立を求める国家,解放を求める民族,革命を求める人民の革命伝統は営々と引き継がれてきた。先人の闘いあってこそ現在のわれわれの闘いがある。なのに,日本の「新しい」と称する左翼は,この歴史をリセット(=消去)し,歴史は自分たちから始まると宣言してあたかも更地に家を建てるように別党派をこしらえ,結果,自ら歴史によって消されてきた。この誤りをもう繰り返してはならない。民衆の底流に生き続けている革命伝統を掘り起こし,再生することが必要である。

人民の戦いは政治的,経済的,軍事的(暴力的)敗北によっては,まだ真の敗北とはならない。  人民の戦いの真の敗北とは,人民が戦ったこと自体に対して自負と正当性の信頼を失った時,すなわち,倫理的,思想的に敗北した時,真の決定的敗北となるのである。〔色川大吉『自由民権の地下水』岩波書店,1990年,p.110〕

 国家は独立を求め,民族は解放を求め,人民は革命を求める。闘いの歴史と伝統を掘り起こし,再興しよう! (M)

2024/12/20 ソウル大学校国史学科大学院研究会の声明

あなたを歴史に記録するだろう

 去る3日夜,
 ユン・ソンニョルが危険で反民主的な戒厳令を宣布した。
 イ・スンマンがヨス・スンチョンで法的根拠もない戒厳令を発動してから76年になる。
 チェチュの山間の村に火を放ち始めてから76年になる。
 プサンでクレーンによって国会議員を連行してから72年になる。
 独裁に抵抗した4月革命の中で戒厳令が宣布されてから64年になる。
 パク・チョンヒが軍事クーデターを起し戒厳令を宣布してから63年になる。
 韓日会談反対示威を弾圧するために戒厳令を発動してから60年になる。
 維新長期独裁を画策して戒厳令を宣布してから52年になる。
 《内乱首魁》がクァンジュで市民を虐殺してから44年になる。
 我々は半世紀ぶりに歴史の退行を目撃する。

 ユン・ソンニョルは反国家勢力,従北勢力を斥けて自由民主主義を守護するという。しかし我々は知っている。韓国現代史において従北と赤色を掲げて国民を虐殺した者が誰なのかを。民主主義を語らって社会混乱を助長し虚偽煽動をこととする者が誰なのかを。まさに今民主主義を抹殺する真の反国家勢力は誰なのか歴史はその答えを知らせてくれている。

 我々は銃を担いで国会に攻め込んでいった戒厳軍と国会を封鎖した武装警察を記憶する。寒風を受けながら国会に駆け込んだ市民を記憶する。我々は非武装状態の市民に銃口を向けた軍人と素っ裸で立ち向かった市民を記憶する。我々は戒厳令を阻止するために塀を越えた国会議員と卑怯にも後ろに隠れた国会議員を記憶する。我々は夜が明けるまで眠らなかった市民と昨晩が《ハプニング》だと笑っていた彼らを記憶する。そして我々は去る3日の夜だけを記憶しないだろう。

歴史を学ぶ我々は決意する。忘れない。あなたたちを記録する。

我々の抵抗は歴史から出発する。我々は最後まで抵抗する。

ソウル大学校国史学科大学院生研究会は要求する。

一つ.内乱首魁ユン・ソンニョルは即刻退陣して法の審判を待て!
一つ.国会は軍事クーデターを共謀して憲政秩序を蹂躙した者たちを弾劾せよ!
一つ.ユン・ソンニョル政権は国家が進めた死と暴力に対して謝罪せよ!

 ソウル大学校国史学科大学院研究会
 2024年12月6日

  (鈴木武訳) →原文

2024/12/10 生きる権利を奪う強制執行(あいりんセンター建て替え&野宿者排除)の提灯持ちたちを許すな

大阪地方裁判所は12月1日,あいりんセンター敷地内に生活している野宿者に対し,敷地内から排除する「強制執行」を行った。これを報じたひとつ,「「50年経ってこれなのかな…」 西成に「潜入取材」した大谷昭宏さんが見た強制執行」24.12.1朝日新聞デジタルで,水野阿修羅(元ML派中央幹部,のち日本寄せ場学会運営委員長)は次のように語っている。

――水野さんたちは建て替えには賛成してるの反対してるの?
水野 だから,私は新しい労働センター早く立ってほしいから。労働センターが新しく建て替えられないと,この街がどうなっていくか全く見えない。
――見えないですよね。
水野 この仮設のままだと結局,労働者が来ないから,新しく建てばまたちょっと人が集まってくるんじゃないかと思ってたんで,早く建て替えて欲しい。

水野の発言には,ここで生活している野宿者の仲間たちの生きる権利への視点はまったくなく,資本と権力の代弁しかない。かつての自由民権運動を「民権から国権へ」変質堕落させた「壮士」たちと同じ醜悪な姿がここにある。歴史は,こうした者どもを許さないだろう。 (M)

2024/12/09 韓国の非常戒厳と弾劾廃案について

12月3日深夜,韓国大統領・尹錫悦は戒厳令を宣言し,演説の中で,彼は韓国の主要野党の「共に民主党」が朝鮮民主主義人民共和国に追従し「反国家活動」を行っていると非難した。直後,国会は,戒厳令解除要求の決議を出席議員190人の全会一致で採択,大統領・尹錫悦は12月4日午前5時過ぎに戒厳令を解除した。労働者人民は15万人が夜を徹して集会し,大統領弾劾を要求したが,国会は7日夜,弾劾訴追案を与党「国民の力」の退席による投票不成立で廃案にした。

 ここから学ぶべき本質と教訓は何か。
 第1に,韓国は「民主」国家なのか。否,社会は「民主化後」などではなく,民主化は緒についたばかりである。反共・国家保安法が象徴するとおり,韓国はアメリカに従属する独占資本が支配するブルジョア独裁国家である。幻想を捨てよ。
 第2に,大統領・尹錫悦を打ち倒す労働者人民の民主主義を求める力は,李承晩打倒の4・19革命(1960年)の経験が教えているとおり,議会内だけでなく,議会外の労働運動をはじめとする大衆運動と結びついて初めて「物質の力」になる。歴史に学べ。
 第3に,日本の一部マスコミは,親日・尹錫悦が倒れて反日政権になれば,日韓関係が心配だと憂慮してみせるが,笑止千万。真の日韓・日朝連帯は,南朝鮮(韓国)と日本とそれぞれに反日反米・反帝国主義の人民政権が実現してはじめて実現する。 (M)

2024/11/22 書評:愼蒼宇『朝鮮植民地戦争』有志舎,2024.7
初出:『週刊読書人』2024年9月27日付(第3558号)
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2024/11/21 立花孝志・斎藤元彦研究(2) 戦後民主主義批判をテコに民主主義の実現をめざそう

今回の兵庫県知事選で着目すべき争点は,知事の人格や倫理でも公約実現率?でもない。それは,“近代の到達点たる議会制民主主義の柱”としての百条委員会(地方自治法第100条にもとづく。百条調査権は,国会の国政調査権=日本国憲法第62条に相当)や公益通報者保護制度への,立花孝志・斎藤元彦による直接的暴力的な破壊行為である。

天皇制と不可分の戦後憲法に対して,戦後民主主義批判をテコに民主主義実現をめざそう!と主張する私はいま,立花孝志・斎藤元彦による民主主義破壊を糾弾し,警鐘を鳴らしたい。民主主義を守れ!(M)
【参考文献】ロバート・ジェラテリー,根岸隆夫 訳『ヒトラーを支持したドイツ国民』みすず書房,2008-2024
……ドイツの一般大衆は当時,ナチ恐怖支配についてどこまで知っていたのか。実際には,戦争の進展とともに強制収容所は次々と増設されて身近な存在になり,被収容者が公開処刑にされる様子まで日常的に見ていた。政府が「非社会的分子」や外国人労働者を排除することを,国民の多くは誇りとし,積極的に協力した。一方で,ヒトラーは「敵」には容赦ない強制手段をとりながら,国民を味方につけることには細心の注意を払った。情報操作を徹底し,事実を隠すよりは公開したのである。

2024/11/19 立花孝志・斎藤元彦研究(1) ユゴー『ノートル=ダム・ド・パリ』を手がかりに

【 「ああ! これがあれを滅ぼすだろう」
 コワチエは,いったい何の本だろうと急いでそばへよってきたが,思わず大声をあげて言った。「おやおや! なんだってまた,この本がそんなに恐ろしいとおっしゃるんですか?〔略〕目新しいものではない。〔略〕印刷されているから恐ろしいと言われるのですか?」
 「そのとおりです」と,クロードは答えた。〔略〕やがて彼は,こんなあ謎のようなことばを言い添えた。「恐ろしいことじゃ! 小さなものが大きなものをうち負かすのだ。一本の虫歯も体ぜんたいを朽ちさせる。ナイル河のネズミはワニを殺し,メカジキはクジラを殺し,書物は建築物を滅ぼすことになるだろう!」〔辻昶・松下和則訳,岩波文庫,2016,上,pp.347-348〕

 私の考えによれば,このことばの意味には二つの面があったようだ。まず一つの面は聖職者としての考えである。印刷術という新興勢力の前におののく聖職者たちの恐れを表わしている。〔略〕
 だが,いま挙げた第一の,おそらくしごく簡単な考えのほかに,いっそう近代的な考えがもう一つ隠されていたように,私には思われる。これは,第一の考えから必然的に出てくる結論だが,それほどたやすくは気づかれず,またいっそう異論を招きやすいもので,もう聖職者ばかりではなく,学者や芸術家といった人びともいだくところの,深い哲学的見解なのである。つまり,人間の思想はその形態が変わるにつれて表現形式も変わっていくのだ,新しい時代の代表的思想はいつまでも古い時代と同じ材料や方法では記録されない,さずがにじょうぶで持ちのよい石の書物も,さらにいっそうじょうぶで持ちのよい紙の書物にとって代わられることになるのだ,という予感なのである。」〔同,pp.350-351〕

 建築は十五世紀になるまでは人類の思想を書き記した重要な帳簿の役目をつとめてきたのであり,十五世紀以前には,人類のいだいた少しでも複雑な思想はみな,建築という形式によって表現されていたのである。民衆の思想も,宗教上の掟もすべて,これを象徴し記念する建物によって表現されたのだ。そして人類はついには,石で書けることのほかには,重要なことは考えなくなってしまったのである。なぜだろう? つまり宗教的なものであれ,哲学的なものであれ,思想というものはすべて永遠に残されることを望むからである。一世代の心を動かした思想は,後世の人びとの心をも動かし,その跡を残したいと願うのである。ところで,写本の上に残された思想の生命は,ごくわずかのあいだしかつづかないのだ! これに反して,建物ははるかに堅固で,持ちのよい,じょうぶな書物なのだ!〔略〕
 しかし,十五世紀になると,すべてが変わった。
 人間の思想は,永遠に生きるために,建築よりもさらにじょうぶで,持ちがよいばかりか,もっと簡単で容易な手段を発見したのである。建築は王座から追われてしまった。グーテンベルクの鉛の文字が,オルペウスの石の文字にとって代わったのである。
 「書物は建物を滅ぼそうとしていた」のである。
 印刷の発明は歴史上の一大事件である。あらゆる革命の母となる革命である。これによって,人間の表現形式はすっかり変わってしまった。人類の思想は,それまでの表現形式を捨てて新しい形式をとるようになったのだ。〔略〕
 印刷という形で表現されるようになってからは,思想ははるかに滅びにくいものになった。誰がこれに異議をさしはさめよう? むかしは硬い石で表わされていた思想は,根強い生命力をもつものになった。長持ちするものから不滅の生命力をもつものになったのだ。石を積んだものはこわすことができるが,地上のあらゆる場所を占める印刷物を根絶やしにすることなど,どうしてできよう?〔同,pp.364-366〕

 コメント――歴史的事実に合致している。しかし,ここでいう印刷の本質は,複製物,すなわち不特定の大衆に向けて公に出されたものということである。紙の印刷物はその本質をもっともよく表わしたものである。(M)

2024/11/08 読書会『抗日パルチザン参加者たちの回想記』第7回ごあんない

 第1回読書会(昨年5月20日)で,「回想記」の歴史的背景,朝鮮人民の抗日革命闘争史を学んだ私たちは,第2回(8月13日),第3回(12月2日),第4回(4月6日)で各自が選んだ回想記について報告,討議を続けてきました。

 第5回(6月30日),第6回(9月15日)は,梶村秀樹『排外主義克服のための朝鮮史』を学び,日本の労働者のなかにある民族排外主義を克服し,朝鮮人民との組織的な連帯をめざす歴史的な手がかりを探りました。

 抗日パルチザン闘争と在日朝鮮人運動から先人の闘いを知り,学ぶことは,私たち自身の生きる糧です。国際主義の伝統はどこにあったのか。労働者に国境はありません。なぜいがみあい対立しなければならないのか,どうすれば手を繋ぐことができるのか。ともに読み,考え,話し合いましょう。

  • 12月8日(日)午後1時15分~4時半
  • 東京・赤羽北区民センター(JR北赤羽駅徒歩1分)第1和室
  • 参加費 500円(要予約)
  • 主催 前田年昭 電話080-5075-6869
            tmaeda1966516@gmail.com

 13:30~14:30 報告 岡崎耕史(福祉労働者)
  リムガン県エチャグ戦闘(2-11話)パク・ソンチョル
 14:30~15:30 報告 キム・ヨンイル(福祉労働者)
  革命のつぼみたち(4-29話)パク・ヨンスン
  革命の暴風雨の中で育ち,勇敢に闘った児童団員たち(11-16話)ファン・スニ
   →第7回読書会テキスト
 15:45~16:30 討 議

↓ 画像をクリックすると,案内チラシ表裏pdfを読むことができます。

2024/08/18 読書会『抗日パルチザン参加者たちの回想記』第6回ごあんない

 第1回読書会(5月20日)で,「回想記」の歴史的背景,1930~40年代の朝鮮人民の抗日革命闘争史を学んだ私たちは,第2回(8月13日,報告:田代ゆき,キム・ヨンイル,須田光照),第3回(12月2日,報告:キム・ヨンイル,前田年昭),第4回(4月6日,報告:土田宏樹)と,参加者それぞれが選んだ回想記について報告し,全員での意見交換,討議を続けてきました。

 第6回は,第5回に続いて梶村秀樹(1935~89)の『排外主義克服のための朝鮮史』を学びます。第5回(Ⅱ 三,四)に続いて第6回はⅢを学ぶことにします。朝鮮史の研究と同時に梶村は,朝鮮人差別撤廃の運動を推し進め,日本の自民族中心の排外的あり方を批判し続けました。本書は,日本の労働者のなかにある民族排外主義を克服し,朝鮮人民との組織的な連帯をめざす思想的な手がかりです。

 抗日パルチザン闘争と在日朝鮮人運動,そのなかで連帯をめざして試行錯誤した少数の先人の闘いを知り,学ぶことは,私たち自身の生きる糧です。国際主義の伝統はどこにあったのか。労働者に国境はありません。ともに読み,考え,話し合いましょう。

  • 9月15日(日)午後1時15分~4時半
  • 東京・赤羽北区民センター(JR北赤羽駅徒歩1分)第1和室
  • 参加費 500円(要予約)
  • 主催 前田年昭 電話080-5075-6869
            tmaeda1966516@gmail.com

 13:30~14:30 報告 キム・ヨンイル(福祉労働者)テキストⅢ 一 1~4
 14:30~15:30 報告 須田光照(労働運動家)    テキストⅢ 一 5~8
 15:45~16:30 討 議

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2024/07/08 和文組版史に記されたSAPCOLのあしあと

大阪DTPの勉強部屋の宮地知さんのお声がけで,7月27日に「大阪DTPの勉強部屋 第35回勉強会」で標記の報告をすることになりました。ぜひご参加ください。

 →第35回勉強会 7月27日開催のお知らせ

  • セッション1『DTPの現在』宮地知さん
    セッション2『InDesignかんたんスクリプト入門』たけうちとおるさん
    セッション3 『和文組版史に記されたSAPCOLのあしあと』前田年昭
  • 7月27日(土)12時から受付,12時30分開始~16時終了
  • 参加費 2,500円 ※参加費は当日受付でお支払いください。
  • 定員 60名
  • 場所 大阪梅田ー大阪駅前第1ビル11階1183号室(大阪市北区梅田1丁目3-1)
       (M)


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