繙蟠録 I & II
 

 索引は最新分参照

繙 蟠 録 II 2022年3-7月

2022/07/07 労働者階級の感情と意識を「消費者」に解消してはならない

「山手線止めた」乗客にJR駅員が激怒…渋谷駅でトラブル“2分20秒”動画拡散され波紋(2022.7.7 Yahoo!ニュース,元はテレ朝news)という報道を見た。

明らかに,この「乗客」はまちがっており,駅員はまちがっておらず,鉄道労働者の鑑である。JRは「行き過ぎた言葉遣いがあったことは、大変申し訳なくおわび申し上げ」たそうだが、謝罪の必要などない。
近年,消費者の党(小沢一郎)や消費協同組合(柄谷行人)などという戯言で,「消費者」のエゴイズムをもてはやす傾向が増しており,苦々しく思っていた。しかも,一部の左翼(?)があたかもこれを正当な権利主張のように擁護するにいたっては,腹立たしいかぎりである。誠実に仕事し,規律を守るという労働者階級としてのプロレタリア道徳を,個人主義(クレイマー化した消費者意識)の攻撃から守らなければならない。
 (M)

2022/04/06( - 07/04) ロシアのウクライナ侵略について

混沌のなかから事実を見分け,本質をつかむのは難しいが,私は次の「事実」に注目した。

これらをひとつながりの特徴的で基本的な事実として捉え,本質を捉えていく言葉が求められている。

国家は独立を求め,民族は解放を求め,人民は革命を求める。これがおしとどめることのできない歴史の趨勢である。ロシアのウクライナ侵略は,この歴史の流れに逆らう悪行である。ロシアを批判する根拠はあくまで“造反有理,革命無罪”という労働者人民の立場にある。国際法違反や国連憲章違反を理由にロシアを糾弾する「左派」(一例を挙げると、「ロシアのウクライナ侵略と日本共産党の立場」22.03.25)は,ロシア革命や中国革命が決して“合法的”に実現されたものではなかった歴史から何ひとつ学び得ていない修正主義である。

ロシアの侵略ではじまったウクライナとの戦争は,ブルジョア国家同士の争いである。一方のアメリカとEUという帝国主義,他方のロシアという帝国主義,両者によるウクライナの資源と国土をめぐる争奪戦争である(→「世界の軍需企業」はウクライナ戦争でこれほど莫大な富を得ている 2022.3.23 COURRIER)ロシアはかつてソ連邦という社会主義国家だった(東欧諸国を下請分業体制にしばりつけるコメコンという大国主義は,社会主義の枠内での誤り)。ソ連邦とウクライナの労働者人民は何十年にもわたって友好的に平和に暮らしていた(→ウクライナ問題にたいするレーニン語録参照)。フルシチョフ以降,共産党は変質し,国家は資本主義に変色した。プーチンは「ソビエト・ウクライナはボルシェヴィキの政策の結果として生まれ」「過ちよりもはるかにひどいもの」(プーチン大統領 テレビ演説 全文,22.2.21)として,レーニンとボリシェビキを全面的に否定した。プーチンは,コメコンの形だけを真似た大国主義,覇権主義,すなわち新たな植民地主義をやっており,労働者人民の敵である。

ここで、もう一度、世界を見る目の基本を確認しておきたい。冒頭に記したように、国家は独立を求め,民族は解放を求め,人民は革命を求めるということである。かつてのベトナム戦争を思い起こそう。一部の左翼(新左翼も含めて)は、これを米ソの代理戦争だといった。しかし、戦争のゆくえを決定し、侵略者アメリカをたたき出した力は、第一にベトナムの労働者人民であり、第二に、米ソの世界共同支配に反対する世界の労働者人民であった。ウクライナ戦争のゆくえもまた結局のところ、ウクライナの労働者人民、および米ロ中の世界共同支配に反対する世界の労働者人民が決するであろうことはまちがいない。

日本の独占資本と権力は,アメリカの目下の同盟者としてこの強盗同士の戦争に加担している。問われているのは,どちらの強盗につくかではない。労働者人民の選択は,帝国主義戦争の打破であり,それぞれの場でブルジョア権力と闘う。かつてのアジア侵略をやった日本,沖縄を隷属下におく日本と闘わず,米軍基地を撤去し日米安保を破棄する闘いと結びつかない「平和」運動は,結局のところ,強盗の手下としてのドレイの運動でしかない。

全世界の労働者人民は,アメリカ・ロシア・中国による世界共同支配に反対し,団結して闘おう! 日米安保破棄! 米軍基地撤去!

【参考】ウクライナ問題に対するレーニン語録

 ウクライナの文化(言語,学校,その他)は数世紀にわたってロシアのツァーリズムと搾取諸階級によっておさえつけられてきたので,ロシア共産党中央執行委員会は,ウクライナ語とウクライナ文化の自由な発展にたいするあらゆる障害をとりのぞくことに全力をつくして協力することを,全党員の義務とする。幾世紀にもわたる抑圧にもとづいて,ウクライナの大衆のおくれた部分のあいだに民族主義的な傾向が見うけられるので,ロシア共産党員はこれらの傾向にたいしてもっとも慎重な態度をとり,ウクライナとロシアの勤労大衆の利益の同一性を同志的に説明して,これらの傾向に対抗する義務がある。ウクライナ領土内にいるロシア共産党員は,すべてのソヴェエト機関内で母語で学び母語で話す勤労大衆の権利を実際に実現しなければならず,ウクライナ語をかげにおしやろうとするロシア化の企てに極力反対して,ウクライナ語を勤労大衆の共産主義教育の道具としなければならない。
――「ウクライナのソヴェト権力についてのロシア共産党(ボ)中央委員会の決議草案」1919.11(vol.30,p.155)

……ウクライナのソヴェト権力には特殊の任務がある。そのような特殊の任務の一つが,現在,非常な注意に値いするものとなっている。それは民族問題である。すなわち,ウクライナは,ロシア社会主義連邦ソヴェト共和国と同盟(連邦)をむすんだ別個の独立したウクライナ・ソヴェト社会主義共和国となるか,それともロシアと融合して単一のソヴェト共和国となるかという問題である。すべてのボリシェヴィキ,すべての自覚した労働者と農民は,この問題を注意ぶかく考えてみなければならない。
 ウクライナの独立は,ロシア社会主義連邦ソヴェト共和国のロシア中央執行委員会によっても,ロシア共産党(ボリシェヴィキ)によっても,承認されている。だから,ウクライナをロシアと融合させるか,ウクライナを自主的な独立の共和国としてのこしておくか,そのばあいこの共和国とロシアとのあいだに,いったいどのような連邦的な結合をもうけるかという問題は,ウクライナの労働者と農民自身だけが,その全ウクライナ・ソヴェト大会で,解決することができるし,また解決するだろうということは,自明であり,十分に一般にみとめられているのである。
――「デニキンにたいする勝利にさいしてウクライナの労働者と農民におくる手紙」1919.12(vol.30,p.292)

勤労者は,資本主義が諸民族を,少数の抑圧的・大国的な(帝国主義的な)完全な権利をもった特権的な民族と,圧倒的多数の被抑圧的な,従属的または半独立的な,平等の権利をもたない民族とに分裂させたことをわすれてはならない。このうえなく犯罪的で反動的な一九一四―一九一八年の戦争は,この分裂をさらにいっそうつよめ,これを基盤とする敵意と憎悪をはげしくした。大国的・抑圧的な民族にたいする完全な権利をもっていない従属的な民族の――大ロシア民族のような民族にたいする,ウクライナ民族のような民族の,憤りと不信が,何世紀もかかって蓄積されてきた。
 われわれは,諸民族の自発的な同盟――ある民族が他の民族にたいしていかなる暴力をくわえることをもゆるさないような同盟――,もっとも完全な信頼に,兄弟的な統一のはっきりした自覚に,完全に自発的な一致にもとづくような同盟をのぞむものである。このような同盟を一挙に実現することはできない。それをなしとげるまでには,事業をだめにしないように,不信を呼びおこさないように,地主と資本家の抑圧,私的所有,それの分配と再分配をめぐる反目が何世紀もつづいたためにのこされた不信を根絶するように,最大の忍耐と慎重さをもって努力しなければならない。
――「デニキンにたいする勝利にさいしてウクライナの労働者と農民におくる手紙」1919.12(vol.30,p.293)

 (M,04/09, 4/12, 4/14, 4/24, 4/30, 7/4改訂)

2022/03/26 ヤジ訴訟勝訴判決(札幌地裁)に拍手

北海道警察による「ヤジ排除」を巡る25日の札幌地裁判決は,道警の行為を違法と断じ,「憲法に保障される表現の自由は基本的人権であり,とりわけ公共的・政治的なことがらについては特に大切で尊重されなければならない」とした画期的な内容である。
〔東京新聞,22.3.26 →画像をクリックすると印刷用pdfを表示〕

以下が,裁判をめぐる基本的な事実を伝える主なリンク先である。
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札幌地裁で勝訴しました(要旨・判決文あり)〔ヤジポイの会,22.3.27〕
道警ヤジ排除国賠訴訟、勝訴判決(原告・弁護団の声明全文、判決骨子・要旨)〔北海道合同法律事務所,22.3.25〕
参院選街頭演説ヤジ訴訟 北海道警側に賠償命令 札幌地裁〔毎日新聞,22.3.26付〕
「安倍やめろ!」ヤジ訴訟 警察官による排除は「表現の自由」の侵害 原告勝訴の理由 札幌地裁〔HBC北海道放送,22.3.25放送〕
道警ヤジ排除「違法」 北海道に賠償命令 札幌地裁「表現の自由侵害」〔北海道新聞,22.3.26〕
「完敗だ」道警に衝撃 ヤジ排除「違法」判決 「やり過ぎだった」の声も〔北海道新聞,22.3.26〕
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「安倍やめろ」街頭演説ヤジ訴訟、道警は「排除」を正当化できるか? 3月25日に判決〔弁護士ドットコムニュース,22.3.24〕
「安倍やめろ」ヤジ飛ばした人を排除…道警の根拠はヤフコメ「プロ市民か極左」など80件〔弁護士ドットコムニュース,20.4.18〕
「ヤジ排除」道警の議会答弁 全文文字起こし〔ヤジポイの会,2020.3.6〕
参議院議員選挙の街頭演説中の強制排除行為について、北海道警察及び北海道公安委員会に対し、改めて速やかな調査結果の公表等を求める理事長声明〔北海道弁護士連合会,20.2.17〕
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ヤジと民主主義~小さな自由が排除された先に~〔HBC,20.4.26,46分,第57回ギャラクシー賞 報道活動部門優秀賞受賞〕

大杉雅栄さんの証言 19.7.16「本当のことなんか言えない(言えば排除される)」
桃井希生さんの証言 19.7.18「サツエキ前で大声出した人間の1日」
石井孝之さんの証言 19.7.20「安倍晋三にヤジを飛ばさなかった友人の話」
桐島さと子さんの証言 19.8.7「ヤジ排除についてのもう一つの証言」
takachanさんの証言 19.8.9「プラカードを持参しただけで警察に包囲されたおばあさんの話」
岩手光雄さんの証言「岩手光雄さんの陳述」
Sさんの証言「Sさんの陳述」
→ヤジポイの会 HP https://yajipoi.wordpress.com/
→ヤジポイの会 note https://note.com/yajipoi/
 (M)

2022/03/08 【書評】MOMENT JOON『日本移民日記』

MOMENT JOON『日本移民日記』(岩波書店,2021年11月)の書評を書きました。
前田年昭「怒りの刃は、差し出された手 日本の男から「移民」ラッパーのあなたへ」〔『週刊読書人』第3428号,2022年2月18日付〕

 →画像をクリックすると印刷用pdfが表示されます 【書評】MOMENT JOON『日本移民日記』  (M)


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